住民の総意を視覚化する「長沼の復興まちづくりんご」がスタート【日本/長野】
「これからのまち、どうなるのだろう」
被災後、住民みんなで集まって、これからのまちについて「ああしよう、こうしよう」と議論したい。でも、コロナ禍で集まるのは難しい。
テーブルを囲んだ話し合いが十分にできないままに、行政が打ち出す復興計画のスケジュールに沿って否応なしに様々な選択が迫り、まちに対立や疎外を生んでしまうことが重なっていく。。。
コロナ禍で復興のプロセスを進めているまちの多くは同じ問題を抱えているのではないでしょうか。
令和元年東日本台風で被災した長野市長沼地区もその例外ではありません。被災前から地域の高齢化率が40%を超えており、感染症リスクへの対応は避けらない状況が続いてきました。昨年度に各分野の専門家をお招きして実施したオンラインの復興リレー講座(全8回)では共通項目として「まちの未来像を」という、復興期に重要なまちづくりの重要なステップが明確になり、また、ネット環境と端末の整備によって、協議方法の選択肢や機会がある程度は広がったのですが、デジタルディバイド(情報格差)を含め、ICT技術で住民一人一人の意見を聴きだし、議論を成熟なものとするには、まだまだ時代が追い付いていない、というのが日本の現実です。
そこで、長沼地区自治協議会と復興対策企画委員会に「コミュニティ部会」が立ち上がり、子育て世代や次世代メンバーが加わって、コロナ禍でも工夫しながら住民一人一人の意見を聞いていこう!という運びになりました。SEEDS Asiaは「コミュニティ部会」メンバーと共にまちの未来像の土台となる住民の方々のコロナ禍でも可能な意見収集に必要なツールづくりと分析に協力しています。
最初にみんなで取り組んだのが、子どもから高齢者まで絵や文字で伝えることのできる、りんご形のカードの開発です。このツールを使用すれば、今まで世帯アンケートで意見を表明することができなかった方々からの意見を集めることができると考えました。長沼のまちが信州りんごの発祥地・名産地であることから、このツールを「復興まちづくりんご」と名付けることになりました。そして、7月にはツールの機能・効果を確認作業として、まずは長沼小学校の児童とその保護者を対象にパイロットテストとして実施。保護者は子どもをどこで育てるか、という長いスパンでまちの価値をシビアに評価し選択する世代ともいえます。まちづくりんごカードの収集・分析の結果、水害を経て助けられた・助け合った経験が、まちの人の魅力(あたたかさ・優しさ)をより実感する機会となっているという、子どもたちのまちを愛おしく感じる気持ちが子どもの言葉で明確に可視化されました。同時に、水害で公園や遊具が喪失してしまったことが、子どもたちにとって切実な課題となっていることも明らかとなりました。子どもたちがトップランナーとして見つけてくれたまちの課題と魅力。今後の解決に向けた動きと共に、同じツールで、長沼住民自治協議会のご協力を得て全戸配布をして多世代から集めていくことになりました。
コロナ禍でテーブルを囲むことは難しい。でも実はワークショップには参加できない層への配慮ができる絶好の機会とポジティブに捉え、大きな声で伝えることができず、気付かれることがなかった声を可視化する機会にしていきたい。収集箱の設置は建設仮設住宅団地4か所、長沼支所1か所、住民交流ハウス1か所、大町、穂保、津野、赤沼(2か所)のまちの拠点の全11箇所に設置しています。9月中に収集し、追って結果を広く共有し、納得できる未来の長沼をつくる骨子(大綱)へとつながりますように。
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2021/09/02