【認定】特定非営利活動法人SEEDS Asia

日本大学理工学部建築学科 「ユニバーサルデザイン」での講義【本部】

7月3日、日本大学理工学部建築学科の井本佐保里准教授が担当されている「ユニバーサルデザイン」の授業(受講者約120名)に事務局長の大津山光子がゲスト講師として登壇しました。

授業の様子 (井本佐保里 准教授よりご提供いただきました)

 

ご依頼を頂いた際に、「途上国や被災地の支援の現場での取り組みや課題」に加え、「なぜそういった分野に進まれたのか、人生史のようなお話も」という依頼をいただいていたことから、人生史と共に、SEEDS Asiaの国内外の事業事例を通して、災害マネジメントサイクルの中で取り残される国・地域・個人の存在に焦点を当て、NGOの役割についてお話しました。

 

授業後には早速に感想を共有いただきました。

どの感想も一生懸命に聞いて下さり考えてくださったことがわかる内容で、ピックアップが難しいのですが、観点別に代表的なものを紹介してみます。

 

  • 視野が広がった

「本日の講演ではこれまでのユニバーサルデザインやバリアフリーに着目していたのとは異なって、より視野を広くして世界をみたときの姿についてまなぶことができたと感じた。個人的に印象に残っているのはミャンマーの3つの見える化の話であり、このような見える化の活動が次世代に対しても伝えるさまざまな手段であるとともに、このような行いも歴史としての見える化につながっていると感じた。」

 

「ここまでのユニバーサルデザインの講義では、バリアフリーの観点から建築に結びつけて考え、設計や計画に活かしていこうと思うものだった。そこにも今回のキーワードとして挙げられた「もしあなたなら」という考えはあった。しかし、どこか自身の考えありきでそれを補うような立ち位置としての要素としてユニバーサルデザインを捉えていたかもしれない。今回の講義を通してユニバーサルデザインに対するより根本的な理解が必要であると感じた。まずは視野の広さの重要性についてだ。建築や都市に限らず、法律や暮らしなどが異なる世界の国々は、それぞれの対策や実際の動きがあるということを注視するべきだと感じた。最近日本と海外の建築の違いについて考えることがあるので、ユニバーサルデザインを含めた柔軟な考えができるようにしたい。」

 

  • 建築を学ぶ自分に何ができるのかを考えた

「災害のリスクとして(hazard×vulnerability×exposure)/capacity という考え方を知ることができてよかった。特にvulnerability は建築にも直結してくる部分であり、その建築が災害時にどのような役割を果たすのかも考えていかなければいけないことを改めて理解できた。また、災害前に地域住民のコミュニティの醸成を促す建築も大切であると思った。capacityに関してはミャンマーの人が防災を学び考えていくことで、1つの災害だけでなく協力して違う問題に対処できるようになることは活動の影響として非常に大きいことだと思った。ミャンマーの例で公共施設を支援することで、住民の格差を介さず比較的公平に支援をできることに納得できた。」

 

「建築は地域の脆弱性に直接的に与える重要な要素だと思った。たとえば、自然災害における被害を最小限にするために建築物の耐震性を向上させたり、耐震設計を適切に満たすような建築を設計することが重要であると思った。また、洪水リスクのある地域では地盤の選定や浸水対策をすることで浸水被害を最小限に抑えることに繋がる。また災害時には建築物は避難所や避難経路として使われるので、適切な避難所の設置や避難経路の確保は地域の脆弱性を軽減するために重要であると感じた。また、地域の脆弱性を軽減するために建築は重要であるが、建築だけではなく都市やインフラなどとの連携がより必要になってくることが分かった。今の自分の状況が当たり前だと思わず、多方面からリスクを考えることで可能性が広がると思った。」

 

「法規の授業などで建築基準法を習い、これを覚えれば災害対策をできるのだろうと思ってました。しかし、これはすべての建築物に等しくかけられる法律であり、防災の地域格差については考慮されていません。今回の講義で、今までよりも具体的な所にクローズアップして防災を学ぶことができました。」

 

  • 防災・災害の重層性・複層性、協力・支援の重要性について考えた

「(一部略)備えが目的とは異なるリスクも減らすという話がとても興味深く、物事の多面性の重要さを感じた。
 ミャンマーでの防災教育は文化的性質から難しいため、心の喜びや悲しみを共有することから始めるという話や、近所の人への挨拶は防災の『お守り』という話を聞いて、何事も最終的には人の心や感覚といった根源的部分に還ってくるのだと心がグッときた。
 防災をしていくことで一番の理想は皆が助け合い、そして助かることである。しかし理想に近づくには膨大な時間を要し、難しいことだと思う。理想を実現するための活動は素晴らしいものだが、その途中で起きた時の対処がどう考えられているのか気になった。例えば、ある地域で行われた防災訓練で子どもが高齢者に声をかけて避難を促すものでは、高齢者を助けるために子どもが死亡する可能性がある。これはユニバーサルデザインの言葉を借りるとすれば合理的配慮と言えるのだろうか。残酷ではあるが理想への道の中で何かトラブルが発生した時の現実的な判断基準は存在するのか気になる。」

 

「お話が面白くて、もの凄く聴き入りました。災害による被害には身体的だけでなくて精神的なものもあるというのを改めて認識した。建築の観点からの防災には1番に倒壊を防ぐ、そして避難場所の充実化やインフラの強化といったことが挙げられると考える。防災について具体的な事例から、当事者の声を聞くと言うのは改善の1番の近道であるなと思った。そして最後の質疑応答で話されてた、普段からできる対策として近所の人への挨拶は徹底してやろうと思った。また今日の話を通して、災害復興の事業に対してもっとアンテナを張り積極的に協力したいと思った。」

 

「『もし自分がその立場だったら』という考えから、災害が残していった傷を知ったことによる衝撃とその長期的な影響を知った責任感から、恵まれ、守られていた自分が、今度はそんな人々を守る責務があるというように考え、行動に移すことの出来るその感性と行動力にとても感服し、尊敬の念に堪えない。発展途上国では、そもそも災害に対しての政策や知識の乏しい国々も存在し、そんな国たちの公的支援の隙間を埋め、支援をするという活動は、手の行き届かない、助かるかもしれない場への救いであり、尊い活動であると感じた。こういった支援活動の内容や状況を知ることで、自分はいかに恵まれている環境にあるかを認識することが出来た。それと同時に、体制の行き届かない国々を知ることで、自分たちは公助に依存しており、国が助けてくれると無意識に思っている節があるとわかる。改めて、立場による見え方の違いを理解すると共に、そういった公助のメッシュからはみ出してしまう人々の立場になって考え、そのアプローチの仕方を我々は考えていく必要があると感じた。

 

 

 今回の講義が何らかの形でこれから道のどこかで活かされることを願うばかりです。建築という、人が集まる場をデザインする学生さんにお話をする機会を頂いた井本先生、そして真剣にお話を聞いてくださった日本大学の学生の皆さんに感謝いたします。

 

日本大学のスコラタワービル(免震構造)

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2023/07/11

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