「長沼の復興まちづくりんご」のキーワードでまちの未来像を語り合い【日本/長野】
SEEDS Asiaは、2021年5月より長沼地区自治協議会と復興対策企画委員会・コミュニティ検討会の方々と伴走する形で支援してきました。その活動のベースとなっているのは、最初に共同で取り組んだ住民の意見集約ツール「復興まちづくりんご」(りんご型をした3色のカード)によって集まった408項目に及ぶ住民の方々の声です。カードの一つ一つには、育まれてきたまちの魅力と同時に、被災後に顕著になった課題、そして希望が文字として表現されており、老若男女一人一人の声を収集・可視化する作業に取り組んでいました。
前号では、人の魅力や得意技を活かしつつ、「集まりたい」という沢山の声に応えていくための、「場づくり」と「担い手」ネットワーク形成を目的とした、まちの人材バンク制度「りんごっしゃん(北信地方の言葉で師匠の意味)」の創設について紹介しました。今回は、コミュニティ検討会の方々と改めて「まちづくりんご」を振り返り、キーワードを拾いながらまちについて語り合う意見交換セッションを1月13日に実施しましたのでご紹介します。
「長沼の復興まちづくりんご」のりんご型カードは3色に分かれており、ピンク色は魅力、緑色は抱えている課題、黄色は希望を示すものとして住民の方々に記載いただきました。収集の際には記載内容をすべて文字入力し、出現頻度を文字の大きさ示す「ワードクラウド(写真上)」として可視化していました。今回はこのワードクラウドを参照しながら、メンバーの方々の想いを合わせて語り合う時間を持ちました。尚、本来ならば、長沼住民交流ハウスに掲示されている「長沼の復興まちづくりんごの木」を見ながら行いたかったこの意見交換セッションは、新型コロナウイルスの影響を受けオンラインとなりました。
セッションでは、長沼城の存在や小林一茶にゆかりある土地であること等、まちの歴史的資源を最大の魅力とする声はもちろん、子育て世代からは、「つながり・やさしさ」に関連し、近所の温かい「見守る目がある」ことについて発言がありました。「世代を超えた近所とのあたたかいつながりがあったからこそ、避難所でも安心して過ごすことができた」こと、そして「被災後の厳しい環境下でありながらも、子どもたちが精神的に安心して過ごせたことが、代えがたいまちの価値だった」と語られました。そして、この経験が長沼に住まう、という居住地選択の決定要素となっていたことも語られ、地域の紐帯がまちの存続を左右したと言っても過言ではないことを参加者一同認識するに至りました。他にも、課題として集まる場や遊べる場がないということについて、被災したまちのイメージをポジティブなものに変化させ、まちの価値をブランディングしていくためにも、豊かな自然を生かし「あそべる」「たのしむ」「にぎわい」といった、若者にも魅力を感じてもらえる創造的ワードについても意見を交わしました。課題の共有と共に「こんな風になったらいいな」という未来像をみんなで語り合うことで、まちづくりんごカードに託されたまちの方々の声が、より鮮明なものとなりました。
こうした文字として表現されている魅力・課題・希望を、次は空間と紐づけて地図イラストにして「REDISCOVER/再発見 ながぬまっぷ」として表現していこう!ということになりました。本資料は、コミュニティ検討会の成果資料として次年度に新設されるまちづくり委員会への引継ぎ資料として提出することを計画しています。