理事長のあいさつ
アジアの災害リスクは、気候変動や付随する環境危機等の新たなリスクの出現により増加傾向にあります。そのため、災害リスクの削減には、これまでとは異なる新たなアプローチが求められます。したがって、防災に携わる人にはやる気と熱意が、防災対策には、各地域の状況に応じたカスタムメイドの対応が必要です。つまり、新しいアイデアと熱意を持って挑戦する若い専門家集団にこそ、これを成し遂げる可能性を秘めているのです。
SEEDS Asiaは、このような視座で、プロ意識を持って、国際防災や地域防災に意欲的に取り組んでいます。日本の災害分野のNGO活動として、特に発災後の人道的な救援活動がよく見られますが、真の災害対応には、「人道的な心と開発的な頭脳」を持って、事前と事後の両方に取り組むことが求められます。我々の団体理念は、こうした災害対応を必要とする人々に貢献できるプロ意識を持った人材を育てることです。私自身、大学で教鞭を執りながら、専門性を高め、かつ学術研究の成果を実践につなげることの大切さを深く感じています。これは、SEEDS Asiaが力を入れている点でもあります。
SEEDS Asiaは、日本やアジアで培われてきた防災分野の長い歴史の中では、まだまだ生まれたての赤ん坊のような存在であり、2006年に特定非営利活動法人として発足しました。その母体は、1994年にインドのデリーで組織された約70人もの専門家を有する防災専門のNGO、SEEDS Indiaです。
発足から数年間における、パキスタン、モルディブ、インドネシア、ミャンマー、ベトナムといったアジアでの活動を通じて、我々の団体は確かな経験を積んで参りました。地域密着型アプローチを試みる中で、災害に負けない持続可能な社会をつくる鍵は学校であると気付き、学校を核にし、子どもに焦点をおいた防災の担い手育成を事業の柱に据えています。
また、我々の当初の動機は、1995年の阪神・淡路大震災の後に神戸で蓄積された知識と経験をアジアと共有することでした。しかし、2011年に甚大な被害をもたらした東日本大震災を受けて、日本でも活動を開始し、宮城県気仙沼市において、教育委員会、学校、現地NGO、そしてコミュニティと緊密に協力しながら活動を展開してきました。これまで、微力ながらも学校やコミュニティの復興に寄与し、その活動の中でかけがえのない経験を積むことができました。その経験は国内の他の被災地、そして今後アジアの国々で実施する活動に活かされています。
現地政府、NGO、コミュニティとの協働の中で、防災のための制度・組織が、持続性という観点で非常に重要であると認識しています。そのため、わたちたちの活動では、現地の制度と組織の強化に注力し、最小限の外部からの支援で、防災活動が継続されるようになることを目指しています。これまでご支援いただいた皆様に心より御礼申し上げますとともに、これからも我々のアジア地域における絶え間ない防災への取組にご支援・ご協力賜わりますよう、お願い致します。
SEEDS Asia理事長
ショウ ラジブ