インドネシア・スマトラ島沖地震大津波から10年を迎えて【ミャンマー】
今日からちょうど10年前の12月26日、マグニチュード9.3という巨大地震がインド洋スマトラ沖で発生し、大津波がアジア・アフリカまでを襲いました。
あまり報道されることはありませんでしたが、インドネシアの北側に位置するミャンマーにも、その巨大な波は到達し、低地のデルタ地帯やココ諸島などの沿岸地の村々を飲みこみました。
当時軍事政権だったミャンマー政府の発表では、その被害は沿岸部の23村、死亡者61名、行方不明者3名と記録されています。インド洋の他国と比較すると被害が少なかったように見えますが、私がこの津波の被災地を訪問した際に住民から聞いたことは「村全部が流された、200人はいた」、という話を聞きました。
ミャンマー政府による被害の記録
当時の状況は、語ることのできない被災者や遺族しかわからないまま、確証のあるデータは記録されず、共有もされないまま10年が経ってしまいました。認識されることもなく、流されていった命が数えきれないほどにあった、ということを忘れることはできません。
このインドネシア・スマトラ島沖地震による大津波では、早期警報と教育の重要性が強く謳われました。日本では当然のように整備、伝達されている地震や津波の速報・警報ですが、インド洋の各国ではこうした津波早期警報システムが整備されておらず、インド洋の国々の政府は避難勧告を出すことができませんでした。
そして、住民の多くも津波の知識を持っていなかったがために、避難の必要性を理解することができませんでした。引き潮で残った魚を集めたり、波の見えるカフェでくつろいだままだったり、津波の映像を撮るためにわざわざ沿岸に来ていた映像が、数えきれないほどに遺っています。
こうした状況を踏まえ、2008年2月にパリで開催された国連の国際惑星地球年(International Year of Planet Earth)では、このインドネシア・スマトラ島沖地震を、早期警報体制と教育体制の不備による『世界最悪の人災による悲劇(Five Cautionary Tales) 』のワースト5の一つとして認定し(http://en.lswn.it/press-releases/international-year-of-planet-earth-global-launch-event-12-13-february-2008)、UNESCOは、防災教育と観測早期警報支援を支援することとしました。
こうした国連や政府の動きをさらに後押ししたのは、イギリス出身のティリー・スミスちゃんという11歳の女の子の存在です。学校の授業で学んだ「津波」についての知識を、クリスマス休暇で訪れていたプーケットのビーチで活かして、何百人もの避難を促し、命を救いました。
https://www.youtube.com/watch?v=V0s2i7Cc7wA
自らの命を守るだけでなく、子どもだって周囲の命を救うことができる、という防災教育の重要性とその効果を世界に示す一例となったこの話は、私たちがミャンマーの学校を訪問する際に必ず紹介し、「みんなティリーちゃんになれるよね」と子どもたちに呼び掛けています。
防災教育はいつかくる「その時」のための、長い道のりです。インドネシア・スマトラ島沖地震と大津波から10年を迎え、決意また新たに、日々の活動にスタッフ一同取り組んで参りたいと思います。どうか引き続き、ご理解とご協力をよろしくお願い致します。
SEEDS Asia
ミャンマー事務所