ミャンマー防災メールマガジン Vol. 1創刊号
ミャンマー防災メールマガジン Vol. 1創刊号 (2014年4月21日発行)
発行:特定非営利活動法人SEEDS Asia
ミャンマー事務所
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この度は、「ミャンマー防災メルマガ」(無料)のご講読を有難うございます。
ミャンマーにおける、政府レベルから草の根レベルまでの防災事情をお伝えすることを目的として、月次に送信させて頂きます。
ご講読いただいている皆様にとって、できるだけ有益な情報をお伝えできればと思っておりますので、ご意見やご要望がございましたら、是非お願いいたします。
創刊号にはミャンマーの防災施策に関わる項目を中心に下記4点をお伝えします。
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(1) 「ミャンマー国家防災行動計画:MAPDRR」の概要
(2) 「ポスト兵庫行動枠組み」策定に向けたミャンマーの動き
(3) 日本政府の防災関連協力事業に関する動き
(4) ミャンマーにおけるサイクロンのリスクについて
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(1) 「ミャンマー国家防災行動計画」MAPDRRの概要
ミャンマーは、2008年5月、サイクロン・ナルギスの襲来によって、約14万人の死亡・行方不明者、被災者は240万人に及ぶ未曽有の大災害を経験し、復興と同時に、総合的な防災対策の必要性を認識するに至った。その後、社会福祉救済復興省・復興救済局は、関係省庁及び、国連・NGOで構成される防災ワーキンググループ*との連携し、2009年「国家防災行動計画:MAPDRR (Myanmar Action Plan on Disaster Risk Reduction) 2009 -2015」を提案した(2012年6月に政府正式承認)。
この国家防災行動計画は、2005年に策定された「兵庫行動枠組み2005-2015」の優先事項5項目と、アセアン防災・緊急対応協定:AADMER (ASEAN Agreement on Disaster Management and Emergency Response)の7項目を、当該国の状況に照合させて策定したもので、全7つの大項目( 1. 防災に関わる制度の整備と充実 2. 災害リスク評価 3. 早期警報システムの導入 4. 国及び地方レベルの防災・緊急対応計画整備 5. 開発における防災の主流化 6. コミュニティレベルの防災能力の向上とリスク軽減 7. 防災における啓蒙活動、教育・トレーニングの推進) 下に、計65の優先プロジェクトが定められている。
防災法の発布の他、国連やNGO、2国間、地域間協力の案件にいても、国家防災行動計画に順じた内容に基づいて実施されている。今後は、防災法の実施規則・規定の策定と共に、現在建設中の国家防災マネジメントトレーニングセンター(於:エヤワディ地域・ヒンタダ区)を、2年半後に完了させ、国を挙げて防災に関わる人材育成の基地づくりに力を入れることとなっている。トレーニングにかかるコストについては、既に米国の国際協力機構USAIDがいち早く支援の計画を発表している。
MAPDRRの詳細(Prevention Webより)http://www.preventionweb.net/files/18657_myanmaractionplanondisasterriskredu.pdf
AADMERの詳細
http://www.asean.org/resources/publications/asean-publications/item/asean-agreement-on-disaster-management-and-emergency-responce-work-programme-for-2010-2015
HFAの詳細(ISDR国連防災戦略より)
http://www.unisdr.org/files/1217_hfaflyerjapanese.pdf
(2)「ポスト兵庫行動枠組み」策定に向けたミャンマーの動き
国際的な防災の取り組み指針である「兵庫行動枠組み(HFA)2005-2015」が策定されてから10年を迎える2015年3月、仙台にて「第3回国連防災世界会議」の開催が予定されている。後継枠組みとして「ポスト兵庫行動枠組み」、通称「HFA-2」を策定することが目的だ。
批准国であるミャンマーも、同会合への準備を始めており、計画の実行を急ぎつつ、レビューと課題を纏めている。去る4月1日-3日には、アジア災害防止センター:ADPC主催による第11回地域連合会議 (Regional Consultative Committee) がネピドーで開催され、「防災から開発へ」と題するテーマの下、ASEAN及びBIMSTEC地域の防災担当省庁関係者が集合。ミャンマー側からはウー・ニャントゥンウー副大統領以下、保健、交通、建設など、複数の大臣が参加した。
一方、国内協議として、4月10日には「ポスト兵庫行動枠組みに関する国内準備会合(National Consultation on Hyogo Framework for Action 2)」が開催され、複数の省庁と防災ワーキンググループ参加の下、7つの協議事項
(1. コミュニティの防災力強化、2. 防災と持続可能な開発及び気候変動との統合化、 3.防災行動の推進 、4. ジェンダーに配慮した防災施策の推進と女性の活用、 5.リスク要因の削減、6. リスク管理と説明責任の強化 7. 私企業の防災推進インセンティブ)が題目に挙げられたものの、時間的な制約上、1、2、5、6が選択され、協議された。こうした準備会合は、今後も引き続き行われていく予定で、6月にバンコクで開催されるアジア閣僚級会議までにミャンマーからの提言が纏められる予定。
第3回 国連防災世界会議について(於:仙台) (内閣府 防災担当)http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/sekaikaigi/01/pdf/siryo_2.pdf
(3) 日本政府の防災関連協力事業の動き
日本は災害大国として、その経験と教訓を活かすべく、災害リスクの高いミャンマーに対し、防災分野における様々な協力を展開している。JICAでは、2012年より、社会福祉救済復興省・復興局に、防災担当省庁役人らの人材育成アドバイザーとして専門家を派遣している他、気象水文局への自動気象観測システム機材の導入や気象予報能力向上を目的とする専門家派遣、国から村レベルまでの早期警報システム導入、デルタ地域における輪中堤防の建設の他、草の根技術協力パートナー事業として、SEEDS Asiaの防災活動への支援など、国レベルから草の根レベルの支援を展開している。
一方、国土交通省では、土井国土交通大臣政務官が訪緬し、2月17日・18日の二日間、ネピドーでミャンマー協同対話ワークショップを開催。防災分野における産官学が協同して技術移転とリスク軽減に向けた防災協働対話の枠組みに関する覚書を、3省間(社会福祉救済復興省、運輸省、農業省)と手交するなど、当該分野における協力関係の更なる促進を目指している。本ワークショップには、学術界から京都大学、民間からは15社が発表した。
(4) ミャンマーにおけるサイクロンのリスクについて
ミャンマーは、地理的・地形的要因から自然災害の被害を受けやすく、中でも大型サイクロン・ナルギスの襲来は、広大なデルタ地帯に住む14万人の死者・行方不明者を出す大惨事となった。
従来ベンガル湾で発生するサイクロンは年間4 – 5個程度で、ミャンマーへの上陸率は全体の1割程度。サイクロンの上陸はモンスーンの前後が殆どで、4-5月にその約半数、10月-12月に半数弱と集中し、ラカイン州、次にエヤワディ地域への上陸頻度が高い。
ミャンマーでは1887年(イギリス統治時代)からサイクロンの記録が保管されているが、近年気候変動が要因と見られるモンスーン期間の減少傾向が見られ、サイクロンの進路や、上陸時期などに予測が困難になってきている。また、2004年のインドネシア・スマトラ沖大地震・大津波の襲来や、サイクロン・ナルギスにより、マングローブが破壊され、住民を高潮から守るためのマングローブ林も減少するという問題を抱えている(住民が生活燃料のために伐採も)。気象予報の機材導入と同時に、シェルターの確保、住民の対応面での課題は、少しずつ改善は見られるが、十分ではない状況にある。
ちなみに、2008年のナルギスの規模は937hpa、最大瞬間風速57.5m、上陸時間は24時間、高潮は約7.2mに及び、被害は甚大なものとなった。より詳細は、ミャンマーの災害に関する概要が掲載されている「Hazard Profile of Myanmar, 2009」を参照されたい。
http://www.adpc.net/v2007/ikm/ONLINE%20DOCUMENTS/downloads/2009/HazardProfileoMyanmar.pdf
ご参考1) ミャンマー防災ワーキンググループについて
ナルギスの緊急支援・復興支援を契機として組成された防災支援団体の集合体。2014年4月現在の登録メンバー団体は54 団体で、国連、SEEDS Asiaを含む国際NGO 、ミャンマーNGO団体で構成されており、社会福祉救済復興省への技術支援を継続的に行っている。
ご参考2) 行政区に関する訳について
本メルマガでは、Region:地域、State:州、Township:区と訳。
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