第3回 My Hometownアジア子ども会合を実施しました
1. My Hometownアジア子ども会合の実施
阪神・淡路大震災から29年を迎えた2024年1月17日、SEEDS Asiaは第3回My Hometownアジア子ども会合を開催しました。
2. My Hometownアジア子ども会合って?
このイベントは、SEEDS Asiaが15周年を機に開始した、アジアの子ども同士で防災とまちの魅力について語り合うオンラインの交流会です。阪神・淡路大震災を経験した神戸市を拠点とする団体として、この大震災で犠牲となられた方々を追悼するとともに、自助・共助の重要性と語り継ぎの大切さを伝えあう機会として、1月17日に実施しています。
3. 大きな課題に、わたしたちはどう向き合う?
台風や地震など、国内外で災害が多発すると同時に、人々の対立・排除・分断といった人為的災害も発生し、世界のあちこちで命・まち・日常が奪われています。
「困ったとき時には助け合いが大切です」と言われます。しかし、「知らない場所の遠くの誰か」を助けることはなかなか難しいものです。私たちは、「助け合い」の実現には、その土台となるつながりが必要だと考えます。つながりの第一歩が、まず相手を知ること、自分のことを伝えることです。コロナ禍でその機会が限定的になってしまったからこそ、オンラインであっても遠いところにいる誰かとつながる機会・伝え合う舞台をつくりたいと私たちは思っています。
人間の力ではコントロールが難しい自然の営みや、世界で発生する争いごとの深さ・大きさを思う時、わたしたちが知ること・伝えることは、とても小さな取り組みです。しかし、私たちはこのような対話の機会が災害の時には助け合い、本当は不要なはずの戦争や紛争といった人為的な災害をも未然に防ぐことにつながっていくと確信しています。
4. 5か国8校の子どもたちは、どんな発表をしたの?
2023年度のMy Hometownアジア子ども会合への参加校は、5か国8校でした。いずれも、洪水、台風、地震や津波の被災を経験したことのあるまちで、SEEDS Asiaとご縁をいただいた学校です。
国 |
学校名(所在地) ※下線のある学校は発表内容を動画で公開中 |
日本 |
鳥羽市立鳥羽小学校(三重県鳥羽市) 豊岡市立新田小学校(兵庫県豊岡市) 長野市立長沼小学校(長野県長野市) 南あわじ市立福良小学校(兵庫県南あわじ市) |
インド |
聖アトゥラナンド校(バラナシ市) |
バングラデシュ |
モデルアカデミー(北ダッカ市) |
フィリピン |
イナバンガ北中央小学校(第7地方 ボホール島) |
ミャンマー/タイ |
子ども育成校(CDC)校(タイ メーソット) |
冒頭の挨拶では、SEEDS Asiaのテクニカルアドバイザーである、岸田蘭子先生(滋賀大学教育学研究科 特任教授)より、「全ての国・まちの子どもたちにとって、様々なリスクに晒された複雑な社会を生き抜いていくための良いつながりのきっかけとなれば、と思っています。今、私たちは、新たな可能性を見いだす挑戦をしていくことを求められています。国際社会において、平和で安全な世界を作っていくという大きな目標に向かって、皆が相手を尊重しつつ力を合わせていくことはとても大切なことだと思います。お互いのまちのことを知り、相手の暮らしを想像し、命を守るために協力し合えることを考えることは、貴重な機会です。今日だけのことでなく、これからも仲間としてお互いのどの町のことも大切に思って友情が続いていくことを願います。」というメッセージをいただきました。
各校からの発表では、過去の災害の体験を踏まえた備えの在り方、防災訓練の様子、環境問題など、まちの課題とその対応について話をしてくれました。同時に、まちの守りたい文化や歴史、美味しい食べ物等、まちの素敵なところも紹介し合いました。ミャンマーの子どもたちは自然災害ではなく、国の政治的な理由(人為的災害)で、大好きだったふるさとを離れなければならなくなった経緯と、学ぶことの渇望、未来への希望を共有してくれました。
その様子は、事前に公開をご了承いただいた学校のみ、YouTubeでご覧いただくことができます(上記の学校リストにリンクを貼っています)。是非、子どもたちのMy Hometownへの誇りを感じていただければ幸いです。
5. 質問タイム:気になる、あんなこと・こんなこと
各校の発表のあとは、質疑応答でした。
事前にそれぞれの学校に「質問したいこと」を尋ねたところ、全部で14個の質問が寄せられました。食べ物や学校生活に係ること以外にも災害に係る質問もありました。
- みなさんの学校では、災害のことを受けついだり、伝えたりするためにどのような取り組みをされていますか。
- 被害にあった地域を、わたしたちはどうやって元気づけられると思いますか
- 被害にあって(あったとき)、どんな心構えが大切だと思いますか
- 今日のように、他の国やまちのことを学び合うことは、どんな時に役立つと思いますか?
質疑応答の後は、SEEDS Asia理事の角地スベンドリニ(前外国人特派員協会会長)から、「お互いのことを知ること、そして自分のまちのことを伝えることは、とても貴重で大切なことです。今日みなさんが自分のMy Hometownをとても大切にしている、愛しているということが良く伝わってきました。先日、日本では能登半島で地震がありました。世界でも今、いろんなことが起きています。大切なことは、みんなの力で一緒に助け合って困難や危機を乗り越えていく、ということ。どこかで悲しいことがあれば一緒に「Rebuilding My Hometown:マイ ホームタウンを作り直していく」、ということです。私はスリランカで生まれましたが、30年以上東京に住んでいます。生まれ育ったまちと、ずっと過ごしてきた2つの「My Hometown」がわたしにはあると感じています。両方知っているから、両方大切なものになるのです。自分のまちが大切と思う気持ちがあれば、相手の気持ちも想像できるはずです。これからも一緒に、みんなで、大切に思う気持ちをもって欲しい」と伝え、お開きとなりました。
6. 参加した子どもたちは、何を思ったのか?
今回、参加した児童一人一人に、オンラインのフォームや紙で、感じたことなどをイベントの目的に沿って10個の質問で尋ねました。
質問:「同じだ」と思ったことはどのようなことですか?
に対し、
- 「それぞれ場所は違うけど、災害から学び私たちには何ができるかなどと、考えている思いなどは共通していること。」
- 「創立150周年や、防災のこと、避難訓練をしていることなどが同じだなと思いました。どの学校も防災に対しての意識が高くて驚きました。」
- 「みんな自分の地域に来てほしいと思い地域の魅力を発表していたところです。」
- 「地震について考えていること、そのまちの伝統的な料理があったりすること」
- 「給食」、「制服」、「カバン」など
といった回答がありました。
質問:もっと知りたいことや伝えたいことは何ですか?
については、主なものとして下記の回答がありました。
- ミャンマーのクーデター
- フィリピンの地震について
- 学校の中の様子、通学方法、休み時間や遊び
- 気候・地形・人口
- 食べ物・文化
- どんな行動をして、まちをよくしていくか
- 地域との交流があるか
自分のまちのことだけでなく、他の国やまちへの興味が喚起されたことが良く分かります。「いつか会って話したい」という声も多くありました。5か国の事情は様々ですが、同じ6年生の子どもたち同士で伝え合うことで、ネット、テレビ、ニュースなどで聞くよりももっと現実がもっと切実に伝わっているように感じました。
他に、「今日は他の国と県のことが色々聞けて、いい経験になったし、楽しかったです。小学校生活の最後にあんなにいい事ができて本当に楽しかったです。」という、主催者冥利に尽きるコメントをいただけたこと、そして「どんなに遠くてもこうしてタブレット端末で繋がることができるのは本当にすごいと思った。私は翻訳を見ないと言っている事がわからなかったけど少しでもわかるように英語を学びたい。」という、総合学習はもちろんICTの活用や英語の学習意欲にもつながっていることも見えてきました。
7. おわりに
以上、第3回My Hometownアジア子ども会合の暫定報告でした。詳細はこちらの報告書にまとめています。是非ご覧ください。
本イベントに関し、ご協力・ご準備いただきました先生方、児童の皆様、関係者の皆様に、心より深く感謝を申し上げます。