【認定】特定非営利活動法人SEEDS Asia

2023年度 鳥羽小学校 夏季校内研修会への講師派遣【日本・鳥羽】

2023年7月27日、三重県の鳥羽市立鳥羽小学校(以下、鳥羽小学校)で特別校内研修会が行われました。この研修会には、SEEDS Asiaより岸田蘭子テクニカルアドバイザー(滋賀大学特任教授)と事務局長の大津山光子が講師として参加しました。

 

鳥羽小学校では、「命をつなぐ子 鳥羽をつなぐ子」の育成を目指して、「鳥羽っ子学習」という地域学習を全教科・全学年横断型で実施しています。SEEDS Asiaは、及川幸彦理事(奈良教育大学准教授)が全体コーディネーターを務めるアクサ・ユネスコ防災・減災教育研修会及びフォーラム(2018年度)をきっかけに、南海トラフ巨大地震に向けた対応を視野に入れながら持続可能な開発のための教育(ESD)を軸とする「鳥羽っ子学習」の充実に向けた、カリキュラムマネジメントと実践を応援してきました。

 

夏季特別校内研修会では、2020年度よりテクニカルアドバイザーとして鳥羽でもご指導いただいてきた岸田先生より「カリキュラム・マネジメントの充実のために ―問いを軸にして単元を構想する鳥羽っ子学習―」について講義がおこなわれました。その後、学校として育てたい資質・能力を考慮しながら、単元構想図と学習指導案を見直すグループワークが行われました。

現地入りし、グループワークでアドバイスをおこなう岸田蘭子先生 (画面最左)

岸田先生の講義とその後のグループワークを経て、参加した先生方からは、以下のような感想が述べられました。

 

  • 「単元構想図(パールロード)、パールカリキュラム、学習指導案の関連性を見直すことの重要性を理解することができた」

  • 「話し合いを通じて理解が深まった。自分の経験を校内で共有していくことが重要だと感じた」

  • 「単元の中でも、小さなプロセス、一人一人のプロセスのつながりが重なって授業になっていくことを感じた」

  • 「『つながる力』、そうやった、と思い出した。このつながる力は特別支援学級のこどもたちが生きるチカラにつながっていることを感じた。」

  • 「本校就任一年目で、鳥羽っ子学習についてはまだまだわからないことが多い。しかし、今回の研修を通じて、例えば生活科で『朝顔や野菜を育てる』、という単元は鳥羽っ子学習が目指す、『命をつなぐ』につながっていて、その意味をしっかり子どもにつないでいくことが重要だと明確に理解できた」

 

また、本研修会の最後には、学校の防災管理に係る事項として、事務局長の大津山光子より2023年6月の台風2号と前線による大雨の対応検証を題材とした「命をつなぐ学校 鳥羽をつなぐ学校であるために―経験学習理論を災害マネジメントに活かす-」が紹介されました。

 

本講義に先立ち、7月19日に「大雨の対応検証会」がオンラインで実施され(鳥羽小学校より校長先生、教頭先生、SEEDS Asiaより及川幸彦理事と大津山事務局長が参加)、今回の講義では同検証会で把握された実態・教訓を踏まえた今後の検討課題が整理・提示されました。

鳥羽小学校の校長先生と教頭先生(下画面)、SEEDS Asiaからは理事の及川先生(左上)と事務局長の大津山が参加し、状況の確認とそれぞれの課題に対する提案が行われました。

及川理事からは、大きく分けて下記3点の指摘事項があり、本研修会を通じて検証会の内容が広く共有されました。

  1. 近年の気象系災害は状況が急変する可能性があるためこれまでの災害の経験・想定を過信しないこと。
  2. 学校の危機対応の基本指針として最も重要な事項は、「子どもの命を守る」こと。
    引き渡しを前提にすると、子ども・教員・保護者を危険に晒す可能性がある。早めの下校か、状況が改善するまで留め置くか、学校としての判断・決断が必要。その指針を事前に保護者と共有しておく。
  3. 子どもの家庭状況に応じて、個別的に対応すること
    多様な地理的条件や交通手段を有する学区の特殊性に配慮する。事前の保護者との情報共有による、家庭の状況や居住地の災害リスクなど、情報把握と方針の決定が重要

 

鳥羽小学校の子どもたちは、船や電車、バスや徒歩など、多様な手段で通学しています。そのため、大雨の際の判断については、気象予測と共に、校区内の状況をリアルタイムで状況を把握し予測に活かすことが肝要です。検証会では校区内の保護者や地域の方々と協力し、情報ネットワークを構築していくことの有効性が共有され、有事に対応するための計画はもちろん、平時からのコミュニケーションや情報収集がカギとなることも確認されました。

 

2018年度からの鳥羽小学校の皆様とのつながりも6年目になります。今年度は鳥羽っ子学習のさらなる充実と、学校の防災管理の二本柱で、ご一緒に学びを深め、歩ませていただけることに感謝の気持ちで一杯です。今後も鳥羽の未来をつくる、担い手育成の応援ができれば幸いです!


~ちょっと小話~

小話ではないのですが、令和5年5月30日に、文部科学省より「水害リスクを踏まえた学校施設の水害対策の推進のための手引き」が公表されています。ソフト・ハードを含め、対策の検討手順などが分かりやすく示されている他、全国の対策・対応事例が紹介されています。参考資料の103頁には、浸水被害を受けて学校施設の水害対策を実施した事例として、マイ・ホームタウン アジア子ども会合に毎年参加くださっている長野市立長沼小学校の被災とその後の対策事例も掲載されています。

 

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2023/07/31

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