第8回長沼地区住民集会の様子【日本/長野】
「はい、みなさん、両手をゆっくり大きく後ろから回しましょ~う!」開始時の体操が恒例となっている長沼地区の住民集会が、4月24日(日)に開催されました。
千曲川の決壊から2年半、第8回目を迎えた住民集会には、長沼地区から約80名、主催側並びに行政関係者を合わせ110名近くが長沼小学校体育館に集まりました。
昨年の4月に参加した第7回住民集会では、桜づつみや河川防災ステーションの形状、そしてコミュニティの再生が課題として挙げられていました。一年が経ち、紆余曲折はありながらも、協議と合意形成が重ねられてきた経緯や成果が報告されていました。
住民自治協議会会長からの挨拶では、昨年度より復興対策企画委員会と住民自治協議会の連携が強化され、平常時の自治組織の運営に戻り始めたこと、そしてこの住民集会が住民間の意見交換の重要な場であることが伝えられました。その後、①令和4年度の新しい組織体制の紹介、②令和3年度の振り返り・報告、③千曲川河川事務所等からの報告という、3つの次第で進められました。
①令和4年度の組織体制の紹介
新体制の紹介では、住民自治協議会会長から公募を経て今年度新たに「まちづくり委員会」が新たに発足したことが報告されました。続いて復興対策企画委員会の委員長からは令和4年度の復興対策企画委員会メンバーの紹介があり、その後、長野市からはONE HEARTと呼ばれる部局横断的なチームの構成紹介とともに、まちづくり計画「ホームタウンながぬま」のアップデートを支援していきたいという意向が紹介されました。
②令和3年度の振り返り・報告
まず河川防災ステーションについて考える第一グループから、3回のワークショップの開催を経て、住民の「憩いの場」としての活用に重点を置いた平面図の最終プランを選択・決定したことが報告されました。また、住民の利用にあたりルールや管理方法の検討が必要になること、そして河川防災ステーションの屋外エリアの管理運営を含め、住民主体の活動に活かす方法の検討が必要であることが次の課題として報告されました。
次に、長沼小学校エリアについて考える第2グループからは、長沼児童センターが4月6日開所式を迎えて運用が始まっていることに加え、3回に亘るワークショップや複数の役員会を経て保育園の建設場所は当初の校舎南側から北側へ変更したこと、プールの解体と駐車場としての跡地利用、津野交差点から校門まで歩道付きの二車線道路とすることの他、小学校・保育園の興隆事業の推進や、災害時の連携などの利点についても報告がありました。
さらに、災害公営住宅について考える第3ワークショップからは、ワークショップの実施と行政との交渉記録が報告され、長沼地区への災害公営住宅が実現しなかったことへの遺憾が共有されました。一方、居住地に課題を抱えている方々の話を聞くこと、そして要望や意見は今後も提案していく旨が報告されました。
そして令和3年度に開始したコミュニティの再生について考えるコミュニティ検討会からも説明があり、SEEDS Asiaと共に取り組んできたまちづくりんごカード(りんご型のカードを活用し、まちの魅力・希望・課題を色別で調査するもの)によるアンケートの実施、まちの人材バンクとしての「長沼りんごっしゃん」の創設、そしてまちづくりんごで見えた、長沼のまちの姿を地理空間と紐づけ絵地図にした「ながぬまっぷ」として掲示しました。
③千曲川河川事務所等からの報告
長野県長野建設事務所からは、村山橋から小布施橋までの堤防を含めた区間を県道として認定する旨の報告があった他、「長沼復興道路」と呼ばれる国道18号津野交差点から河川防災ステーション北側をつなぐ計画ルート(0.7km区間、幅員9.75m)が紹介されました。続いて、千曲川河川事務所からは、信濃川水系河川整備計画の変更スケジュール、河川整備基本方針と河川整備計画、信濃川水系河川整備計画の概要、変更内容についての紹介がありました。また、コミュニティタイムラインを事例とする地域単位での避難行動計画の支援状況、かわまちづくりとして2019年に長野県内の5市町村での計画が登録されており、水辺拠点の整備とイベントの広域連携を通じ、次世代の水辺体験を通した活動を充実させる旨の説明がありました。こうした全体計画の紹介の後、堤防工事の進捗状況についてもそれぞれの地区での進捗についての報告が行われ、質疑応答となりました。
住民側からは、「防災ステーションの建設予定地は長沼城の跡地で埋蔵文化財の発掘調査が行われている。現段階でどのようなものが発掘されているのか?重要な発掘物が出てきた場合、河川防災ステーションの計画にどのような影響はあるのか?建造物の老朽化が否めない中、次世代への負担をどのように配慮するのか」という質問が挙がりました。この質問に対し、長野市、千曲川河川事務所が回答し、まだ詳細の報告書が出ていないことを踏まえつつ、発掘調査の内容次第で吟味・検討していく可能性はあるという旨の回答がありました。次の質問では、「住自協、復興対策企画委員会、まちづくり委員会、ONE HEARTチーム、コミュニティ検討会など多様な組織があり、それぞれの役割や目的を明確にしてほしい」という発言がありました。この質問については、住民自治協議会の区長代表から組織表を改めて提示する旨の変更がありました。3つ目の質問では、災害公営住宅が実現しなかった中で今後どのように対応していくのか。課題の追求の在り方を問うものでした。4つ目には、復興道路について河川防災ステーションの北側だけではなく、南側への接続も希望すること、さらに通学路にもなることから歩道の安全性を確保して欲しいという切実な要望が共有されました。また5つ目として堤防の坂路についても十分な幅員の確保についても念押しがありました。
以上のように、住民集会は住民自治協議会と復興対策企画委員会より、一年間の活動成果と進捗、これからの課題について共有し、官民の活発な議論の場となりました。「魅力ある長沼 ここで生きていく」を掲げ、被災直後から躍動感を持ってリードしてきた復興対策企画委員会の任期期限があと一年と迫ります。
今年度新たに発足する「まちづくり委員会」との連携はもちろん、住民と行政、組織と組織、人と人の、合意形成の在り方と有機的なつながりの構築が、大きく今後のまちを左右する年となるのではないか、と感じています。素晴らしい長沼のまちの価値を未来につなぐために、今年度こそ踏ん張りどころです。これからも、多くの方々からのご指導・協力・ご支援を賜りながら、復興まちづくりの一助となれたら幸いです。